2026年4月24日、国土交通省が航空法告示を正式に改正し、旅客機内でのモバイルバッテリーに関する新たな安全基準が施行されました。 Nikkei 機内でスマートフォンをモバイルバッテリーで充電するという、多くの旅行者が当たり前にしていた習慣が、国内線・国際線を問わず日本発着の全便で事実上できなくなります。
今回のルール変更は、日本国内を発着するすべての国際線・国内線に適用される見通しです。 Enjoy-bkk 「国際線だけの話」「海外の航空会社には関係ない」という誤解が散見されますが、日本の空港を使う便はすべて対象です。
GWや夏休みの旅行を控えている方は、今すぐ確認が必要です。
【参照】国交省 モバイルバッテリーの機内持ち込みの新たなルールについて

なぜ今、規制が強化されたのか|相次ぐ発火事故が引き金に
規制強化の背景にあるのは、近年急増している航空機内でのモバイルバッテリー発火事故です。記憶に新しいのは、2025年1月に韓国・金海国際空港で起きたエアプサン391便の火災事故です。乗客乗員176名が搭乗していた機内で炎と煙が上がり、全員が緊急脱出する事態となりました。韓国当局の調査によると、座席上の荷物棚に入れられていたモバイルバッテリーが出火元と推定されており、残骸が荷物棚付近で発見されています。 Voyage
日本でも2025年10月、那覇発羽田行きのANA994便(乗客339人搭乗)で、離陸直後に乗客のモバイルバッテリーが発火・発煙しました。けが人は出なかったものの、機内で緊急対処が必要となりました。また2026年3月には、羽田空港第一ターミナルのJALラウンジで、充電中のモバイルバッテリーが発火し、男性客が軽傷を負う事故が発生しています。 Voyage
こうした事故の連続を受け、国際民間航空機関(ICAO)においてモバイルバッテリーに対するリスクの軽減を目的とした国際基準の緊急改訂案が提出・採択されました。 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism 日本の国土交通省はこれに準拠する形で、2026年2月18日に規制方針を固め、4月24日の施行を正式発表しました。 Nikkei
リチウムイオン電池が危険な理由
モバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、軽量かつ大容量という優れた特性を持つ反面、衝撃・圧力・高温・過充電などのストレスがかかると「熱暴走」と呼ばれる連鎖反応が起こる性質があります。一度始まると自力では止まらず、最終的に電池のケースが破裂し、可燃性ガスが噴出して発火・炎上に至ることがあります。 Voyage
航空機内においては、荷物棚に無造作に入れられたモバイルバッテリーが他の荷物に圧迫されたり、落下の衝撃を受けたりすることで、この熱暴走が誘発されるリスクがあります。 Voyage
2段階で進んだ規制の経緯|2025年7月→2026年4月
今回の規制は突然の出来事ではなく、段階的な強化の積み重ねです。旅行者はその変遷を正確に理解しておく必要があります。
第1段階:2025年7月8日〜 オーバーヘッドビンへの収納禁止
日本の主要な航空会社各社が2025年7月8日から新しいルールを設け、モバイルバッテリーを座席上の収納棚へ入れることが禁止されました。万が一、発熱や発煙が起きた際にすぐに気づき対応できるようにするためです。モバイルバッテリーは座席の下や前の座席のポケット、ご自身のかばんの中など、常に手の届く範囲で保管するよう求められました。 Anker Japan
収納棚の中では異常が発生しても発見が遅れやすく、初期対応に支障が出ます。バッグの中に入れていたモバイルバッテリーが発火した場合、棚の中では初期対応が間に合いません。 PHOTO TRIP エアプサンの事故は、まさにその最悪のシナリオが現実化したものでした。
第2段階:2026年4月24日〜 機内での使用・充電を全面禁止
今回の改正により、機内持ち込み可能なモバイルバッテリーは1名当たり2個(160Wh以下に限る)まで、航空機内においてモバイルバッテリーへの充電は禁止、航空機内においてモバイルバッテリーから他の電子機器への充電も禁止となりました。 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
【最重要】2026年新ルールで何がOKで何がNGか
持ち込みについて
新ルールでは、容量にかかわらず持ち込みは最大2個まで。持ち込み自体は引き続き可能であり、禁止されるのは「機内での使用と充電」であって「持ち込み」そのものではありません。 Otokurashi また100Wh以下の予備電池はこの2個制限の対象外で、合理的な数量であれば複数持ち込めます。 Voyage
容量の上限については、2個以内で160Wh以下であれば没収されません。没収されるのは160Wh超のバッテリーや、3個以上持ち込もうとした場合です。 Otokurashi
機内での使用・充電について
モバイルバッテリーを使ってスマートフォンを充電すること、および座席備え付けのUSBポートやコンセントを使ってモバイルバッテリー本体を充電することが、ともに禁止されます。
一方で、飛行機の座席に備え付けられているUSBポートや電源ポートから直接スマホ等を充電することは引き続き可能です。 Action-bepilot 機内充電を完全に諦める必要はなく、座席の電源設備を活用する方向で対策を取ることが現実的です。
罰則について(元情報の誤りを訂正)
一部のウェブ記事で「懲役2年・罰金100万円」という刑事罰が科されると書かれていますが、これは事実と異なります。現時点で具体的な罰則は公表されていません。ただし航空法に基づく告示違反となるため、乗務員から使用停止を求められた場合は従う義務があります。機長の指示に従わない場合は、航空法に基づく罰則の対象になり得ます。 Otokurashi
容量早見表|自分のバッテリーは持ち込めるか
Wh表記がない場合は「mAh × 電圧(V) ÷ 1000」で計算できます。一般的なスマートフォン向けのモバイルバッテリー(10,000〜20,000mAh)はほぼ100Wh以下に収まるため、大半の製品は持ち込み可能です。
| 表記容量(mAh) | Wh換算(3.7V換算) | 新ルールでの扱い |
|---|---|---|
| 10,000mAh | 約37.0Wh | 持ち込み可(2個制限内) |
| 20,000mAh | 約74.0Wh | 持ち込み可(2個制限内) |
| 27,000mAh | 約99.9Wh | 持ち込み可(上限ライン) |
| 30,000mAh | 約111.0Wh | 持ち込み可(160Wh以下) |
| 43,243mAh超 | 160.0Wh超 | 全面持ち込み禁止 |
国内線・国際線・航空会社別の対応状況
タイ国際航空(TG)は2025年3月から先行して機内での使用・充電を全面禁止しており、エアアジア系もすでに禁止済みです。JAL・ANA・ZIPAIR・AirJapan・ピーチは2026年4月からの禁止となります。 Enjoy-bkk
日本以外の航空会社では、大韓航空がすでに座席上の収納棚への収納を禁止しており、シンガポール航空なども機内での使用と充電を禁止しています。 Arukikata また韓国の航空会社では2026年2月より、機内でのモバイルバッテリー使用が全面禁止となっています。 Voyage
今回のICAO新ルールは新しい規制というよりも、これまで各国でバラバラだったルールを統一したものです。今後はより厳格にチェックされる可能性があります。 Funliday
LCC利用者は特に要注意
今回の規制でとりわけ影響を受けるのがLCC(格安航空会社)の利用者です。ピーチやベトジェットなどの機材には座席コンセントやUSBポートがない場合がほとんどです。 Enjoy-bkk 代替手段がないまま搭乗すると、長時間フライトでデバイスのバッテリーが尽きるという状況が発生します。事前に空港での充電を済ませる習慣が必須となります。
中国経由の乗り継ぎは別のルールに注意
中国国内線を利用する際は注意が必要で、CCC認証(中国強制認証)の取得がモバイルバッテリーに義務化されています。搭乗前に使用するモバイルバッテリーにCCCマークが表示されているかを各自で確認してください。 PHOTO TRIP AnkerやBelkinといった有名ブランドでも、日本・欧米向けモデルにはCCCマークが付いていない場合があります。中国路線を利用する際は特別な確認が必要です。
PSEマーク未表示の製品は没収リスクあり
2025年7月から全ての製品に表示が義務付けられた「PSEマーク」がない海外製の格安品や旧型製品は、保安検査場で没収されるリスクがあります。購入時には必ず確認することが重要です。 Today-jp また、Wh表記が摩耗して読めなくなっている製品も、容量が確認できないとして没収の対象になり得ます。数値がはっきり確認できる状態の製品を使用するか、レーザー刻印されたモデルを選ぶと安心です。
新ルール対応の実務的な対策4選
1. 搭乗前にフル充電を徹底する 機内での使用が禁止されるため、搭乗前の充電が必須です。空港にはコンセントやUSBポートが設置された待合エリアがあります。搭乗ゲート付近で最終充電を済ませる習慣をつけましょう。 Otokurashi
2. 電源付き座席を優先予約する 禁止されるのはモバイルバッテリーの使用であり、座席に備え付けられたUSBポートやコンセントからスマホを直接充電することは禁止対象外です。長距離フライトでは電源付き座席の確保が重要度を増します。 Otokurashi
3. PSEマーク・Wh表記を事前確認する 空港の保安検査で問題なく通過するためには、Wh表記が明瞭に読めること、PSEマークが表示されていること、容量が160Wh以下であることの3点を出発前に確認しておきましょう。
4. 現地のバッテリーシェアサービスを活用する 持ち込みのリスクや煩わしさを完全に排除したい場合、「ChargeSPOT」などのレンタル充電サービスを目的地で利用するスタイルも現実的な選択肢です。到着ロビーや市中で借りられるサービスが国内外で拡充しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 2026年4月から飛行機の機内でモバイルバッテリーは使えますか? A. 日本発着の便では使用できません。国土交通省が2026年4月24日から航空法告示を改正し、機内でのモバイルバッテリーによる充電および本体への充電が禁止されています。座席備え付けの電源ポートから直接スマホを充電することは引き続き可能です。
Q. モバイルバッテリーは飛行機に何個まで持ち込めますか? A. 2026年4月24日以降、容量にかかわらず1人2個まで(160Wh以下に限る)です。予備電池と合算してカウントします。ただし100Wh以下の予備電池はこの制限の対象外です。
Q. モバイルバッテリーはスーツケースに入れて預けられますか? A. 預け入れは従来通り禁止です。必ず機内持ち込み手荷物として携帯してください。
Q. モバイルバッテリーを機内で使ったら罰金や懲役になりますか? A. 現時点で「懲役2年・罰金100万円」といった刑事罰は公表されていません。ただし乗務員や機長の指示に従わない場合は航空法に基づく処罰の対象になり得ます。
Q. オーバーヘッドビン(頭上の荷物棚)にモバイルバッテリーを入れてもよいですか? A. 禁止です。2025年7月8日から日本の主要航空会社で荷物棚への収納が禁止されており、2026年4月以降もこのルールは継続されます。常に手元(座席下や前席ポケットなど)に置いてください。
Q. 国内線と国際線でルールは違いますか? A. 基本的なルールは同じです。日本発着の国内線・国際線のいずれにも同様に適用されます。ただし航空会社によってより厳格なルールを設けている場合があるため、搭乗する便の公式案内を事前に確認することをお勧めします。
Q. ノートPCを機内で使うことはできますか? A. できます。規制の対象は外付けのモバイルバッテリー(予備電池)であり、ノートPCやスマートフォンに内蔵されたバッテリーは対象外です。ノートPCの機内使用そのものは制限されません。
Q. 中国経由で乗り継ぐ場合に注意することはありますか? A. 中国では国際基準に加え、CCC認証(中国強制認証)マークの表示が義務化されています。有名ブランドの製品でも日本・欧米向けモデルにはCCCマークがない場合があるため、中国路線を利用する際は事前に確認が必要です。
Q. 20,000mAhのモバイルバッテリーは飛行機に持ち込めますか? A. 持ち込めます。20,000mAhは3.7V換算で約74Whであり、160Whの上限を下回ります。ただし機内での使用・充電は2026年4月24日以降禁止となっています。
まとめ
今回の規制の核心は3点です。持ち込みは引き続き可能(1人2個・160Wh以下)、機内での使用・充電は禁止、オーバーヘッドビンへの収納も禁止。この3点を押さえれば、空港での没収リスクや搭乗トラブルを回避できます。
「懲役」「即没収」といった過剰な表現で不安を煽る情報が一部で出回っていますが、正確には「使用・充電の禁止」と「個数制限」が主な変更点です。正しいルールを理解した上で、搭乗前の充電習慣と電源付き座席の確保という2つの対策を取れば、快適な空の旅を続けることができます。
